「硫黄島からの手紙」を観た

昨年末に公開された時はニューヨークとカリフォルニアの数館でしか公開してなくてなんだこれはと思ったのだが、これは先行公開という意味合いだったらしく、先週末から全米で本格的に上映が始まった。近くの映画館でもやっているというので、今朝10時半からの回を観に行ってきた。
20スクリーンぐらいあるシネコンの一室。他の部屋と比べてどうなのかは分からないが小ぢんまりしたスペースで、客席は半分弱の入り。年齢層はほぼ全員中年以上。吹き替えではなく全編日本語で、英語の字幕が入る。
以下感想(ネタバレは一応なし。ただし観てない人は観たくなくなるかもしれない)。
考証などに関しては、明らかな間違いもあったし、書き出すときりがないと思うが、日本軍の描写は現代の日本人が撮ったとしてもそううまくはいかないだろう。艦隊やら上陸作戦やら爆撃やらのCGはさすがハリウッドだと思った。
しかし、期待していたのとはちょっと違う。硫黄島戦を日本側から映像化するのであれば、

  1. 栗林中将の巧妙な戦略
  2. 戦闘の悲惨さ、苛烈さ

が二本柱になるべきだと思うのだが(監督はそうではなかったのかも知れない)、どちらも中途半端だった。例えば前者に関しては、栗林の戦略のおかげで陥落まで1ヶ月以上かかったという点が映画からは理解できない。「2日で終わった」といわれても信じるだろう。時間の経過を表すのに日付を字幕を出すようなことはクリント・イーストウッドの美学では許されないのだろうか。後者については、映像の限界という点もあるだろうが、暑さ、飢え、渇き、臭気が見えてこないのが残念だった。戦闘開始後1ヶ月も経っているのに兵隊が綺麗過ぎる。爆弾で体が吹っ飛ぶシーンはあっても、それは特に硫黄島に限った話ではないわけで。
結論として、反戦、あるいは硫黄島戦を知らない人への啓蒙、という目的の映画としては、一見の価値あり。戦争ドキュメンタリーを期待してはいけない。そういう人は本を読んだほうがいい。あと、裕木奈江は1シーンしか出てこないので注意。