立ち読み書評

買ってもいない本の話をするのは非常にケチ臭いが、昨日立ち読みした本の中で、へぇと思ったことのメモ。
『ビゴーが見た日本人―諷刺画に描かれた明治』 ISBN:4061594990
教科書にも載っている有名なノルマントン号事件の風刺画というのがあるが、これもビゴーの作品。日本人乗客を見殺しにする英人乗組員を描いているが、これは実は条約改正に反対していたビゴーが、結果的に条約改正の機運を盛り上げてしまったイギリスの対応を批判するために描いたものらしい。へぇ〜。教科書にはそんなこと書いてなかったよなあ。


しかも(ここからは本には書いてなかった、または少なくとも読んではいないこと。今調べた。)この絵に描かれている船はノルマントン号ですらない。その証拠に、救命ボートについている旗は確かに英海軍旗なのだが、沈みかけている船にはためくのはフランスの三色旗。これはノルマントン号事件の翌年、1887年に上海(?)で沈んだフランス船「メンザレ号」で、この絵の表題も「メンザレ号の救助」というらしい。そういえば海に浮かんでる人も西洋人だし。つまり、えーと、ここから先は漫画の解釈になってしまうので難しいのだが、メンザレ号の遭難現場にノルマントン号の救命ボートが居合わせたら、あいつら馬鹿だからきっとこういう対応をしただろうよ、ということか。というわけで、この絵をノルマントン号事件の資料として使うのはかなり不適当なんじゃないかと思うんだが。