長輪線

室蘭本線の歴史を調べてみると、室蘭本線のうち長万部東室蘭輪西)間は初め、「長輪線」と呼ばれていたことがわかる。
「長輪線」。普通に読めば「ながわせん」だろうか。ただ、鉄道路線名で起終点の駅名や都市名、国名を一文字ずつとったものの場合、音読みするのが通例(例えば太多線仙石線紀勢線など。米坂線などの例外もある)なので、それに従えば長万部輪西から一文字ずつ採ったこの線名は、「ちょうりんせん」ということになる。
という予測の元、『停車場変遷大事典』(ASIN:4533029809)を開いてみたところ、この路線名、実際は「おさわせん」と読むのだった。
この本は読みがわからない(裏づけがない)ところは「?」をつけているが、それもついていないので間違いないだろう。長万部が「おしゃまんべ」だから「おしゃ」、ではなくて「おさ」ということか。流石に「ちょうりん」は語呂が悪すぎた。


ついでに「google:長輪線」でも検索してみる。すると、室蘭本線の歴史を記述したサイトに混じって、7つ目ぐらいに「胆振長輪線草刈清掃業務委託」などとあるのが見つかる。
これは何だろうか。「google:"胆振長輪線"」で見ると、サイクリングロードとして整備された伊達市道の名前だということがわかる。伊達市道の名前が長万部輪西に由来するというのは考えにくいので、長輪というのは伊達市内の地名という想像ができる。


長輪という地名があるのか、あるのだとすれば、「長輪線」は起終点の駅名から1文字ずつ採りながら訓読みする珍しい路線名…という話の前提が崩れてしまう。
「goo 郵便番号」で長輪を検索してみる。
http://channel.goo.ne.jp/postcode/search.php?MT=%C4%B9%CE%D8&kind=0&kana=
大字の一部でもマッチすれば表示されるはずだが、1つもヒットしない。現在の伊達市に長輪という地名は存在しないようだ。


伊達市の中心駅である伊達紋別駅の隣の駅は、「長和」という。となると、長輪は長和のtypoではないのか。google:"胆振長和線"。うん、確かに1件だけ[PDF]ヒットする。市の広報紙の1ページのようなので、それなりに信用できる。しかし、google:"胆振長輪線" site:city.date.hokkaido.jpでヒットする件数のほうが多いし、例規集の中にある「伊達市の沿革」[PDF]なんていうページにまでヒットして、どうも「長輪」のほうが分がありそうだ。
ひょっとして「長和」が昔は「長輪」だったのでは、とも考えたが、「長和」(ながわ)は駅名・字名ともに昭和34年に「長流」(おさる)から改称されたもの。理由は

周辺は市街地。長和と書いて"ながわ"と読むが,石勝線沿線には長和と書いて"オサワ"と読む地区があり,そちらの信号場名は"オサワ"としている。しかしこちらの長和ももとは長流(オサル)に由来するもので,長流が「お猿」に聞こえることから,地元中学生達の要望で改名されたという。

だそうだ。笑ってしまう。
http://mapbrowse.gsi.go.jp/cgi-bin/nph-mm.cgi?mesh=6340564&x=-1&y=-1
上記URLは伊達紋別駅近くの地形図だが、市道の名前までは載っているわけもない。「伊達市」の文字に交差している「自転車専用道路」というのがこの道。一見してわかるように、鉄道(胆振線)の廃線跡の転用である。「風のメモリー」という、やや恥ずかしい名前がついているらしい。
参考:http://member.nifty.ne.jp/O-Sam/Bike43.html


というわけで、結論としてはよくわからないのだが、

  1. 国鉄長輪線の記念のため、わざと「長輪」にした。
  2. サイクリングロードだから、長「輪」線。
  3. 地図にも載らない、長輪という地名(小字)がある。
  4. 駅名や地名は長和だが、長輪と書く習慣もある。
  5. 伊達市は公式文書に道路の名前を書くにあたって、変な変換ミスをする癖がある。
  6. 伊達市市道の名前をつけるとき、変換ミスに気づかずにそのまま制定してしまった。

の、どれかだろうか。